<< 富山、砺波の「カイニョ」。 MAIN 昔ながらの家造りと、昔ながらの習俗と。 >>
古い建具たちの、リユース。
※カテゴリー「里山と結びついた家づくり」とダイレクトにはつながらないですが、
このおうちと結びつく予定なので、このカテゴリーに入れております。

先日、なかまの大工さんから、
昭和29年建築の、古い公民館の解体が決まったので
まだ使えそうなものを活用させてもらうために
見に行くということでお誘いをいただき、
ご一緒させてもらいました。

できれば、直して使えたらいいけどね……と言ってましたが、
プロが「壊すより直すほうがずいぶん高くついてしまう」と判断して、
持ち主にあたる地区のかたがたもその選択をとると決めたのならば、
傍観者が「もったいないなあ……」と感じても、それは言わない約束。
ならばせめて、まだ活かせるものだけはなんとかしよう、ということが
この場所と縁のできた人間にできること、です。きっと。


建物全景

ひとつの区の公民館にしては、大きな建物。
ステージと大きな座敷、管理人室がありました。

昔、5つの区が共同で使っていた、
小学校が建ったときと一緒につくられた、
あのころはにぎやかだった……
地元のかたに、そんな思い出話を聞かせていただきながら、拝見。

この建物は地元の大工さんたちで作ったそうですが、
今は、どの大工さんたちも高齢で、そしてどこも後継者がいないそうです。
仕方ない流れだとは思いながらも、
高度成長期って、ある側面からは衰退期なのだな……と
複雑な思いになります。


窓

目を引くのは、
入り口の左右にある、星形をした明かり取りの窓。

はじめてこれを見た私たちも、キュンとなりました。
昔からここを利用しつづけてきた地元のかたにとっては尚更、
記憶に刷り込まれた、とても印象的なものだったのだろうなと想像します。

私を含め、大工じゃないひとたちは
「ああ、これは、なくなってほしくない」と感傷先行で願い、
大工のひとたちは「無理」とは言わないものの、
「その気持ちはわかるよ」という微妙な表情をしていました。

無事に外すのはたいへんだろうな、とは
想像はしてましたが、木枠は構造材に固定され、
外側はコンクリートに固められている窓枠。


「とりあえず、やってみよう」と、
大工のTさんが砂漆喰で固められた
内側の壁をめくりはじめます。
ほどなく見える壁の板材。
大工たちが相談をはじめます。
外側からは、コンクリを割り進めないといけないので、
衝撃で割れないように、まずははめ込まれているガラスを外す作業。
ネジもさび付いているから、たいへんです。
私たちも手伝いましたが、やはり、主戦力は大工のふたり。

懺悔?
(はずしかたを相談中。なんか懺悔の1シーンみたい)


砂漆喰をはがすコンクリをなんとかする
繊細に、ときに大胆に、
また、内側、外側とようすをみながら
漆喰を削り、コンクリを割り、構造材を切りながら、

ガラスをはずす
ようやく、


I大工
とれたーーー!

T大工
こっちもとれたーーーー!

手さぐりの中、数々の難関にもくじけずに、
窓もガラスも損なうこともなく、無事、
とりはずすことができました。

この窓をぜひ活かしたい、どうか頼みます!!と言っていた
I大工の施主・K氏に、
「自分、窓、死守しました……」の証拠写真をお送りします。

ちからつきる


そしてこの直後、とれた窓をしみじみ見ながら、T大工が
「いやー、ほんとにとれるとは思わなかった」とつぶやき、
I大工がほんとうにへなへなとずっこけたりしました。
(いや、これ↑が演技というわけではないのですが)

なんとかしたいよね、と言い出したのはT大工で、
言外に「すごい大変だし無事にはずすのは超大変」とにおわせつつも、
この公民館の解体の話を持ってきたT大工がそういうなら
ベストを尽くすぜがんばるぜ、と
奮闘していたのがI大工だったのですね。

なかよしのふたりです。



……さて、そのほか。

建物の両側にたくさんある窓を見ながら、
「このガラスは割れて新しく替えてるな……
……あ、これはたぶん昔から残ってるガラス」とI大工。

屋根裏を覗いて、
「洋小屋のつくりやねー。トラスがある」とT大工。

大工たちには、古い道具や建具を見ては
「すごいなー」「これはまだ使える」などと
見た目の範囲だけで言っている私とは
違うものが見えているようです。

使えるそうなものたちを救出しつつ、
どんどん日は暮れ、
なんとか、この日のうちに終了しました。


最後に、
せっかく舞台があるのだから、と
公民館に「おつかれさま」の気持ちを込めて、
しずかに演奏。

演奏1

演奏2

いただいた窓、建具、その他もろもろ、
活かさせていただきます、公民館さん。

区長さんに終了のごあいさつにうかがい、
窓が活用できたときには、また写真などお送りしますね、と
大工たちがお話ししていました。

いい風景だなあと思いました。


取り壊し予定の日は過ぎたので、
この建物はもう、ありません。


公民館玄関前の蝋梅の木には、
きれいな黄色い花と、実がついていました。

蝋梅花
蝋梅実


「里山と結びついた家づくり」 | 01:18 | comments(1) | - | - |
コメント
この窓の形が、山陰線「八鹿駅」の駅舎についている窓とそっくりだと教えていただいたので、備忘のために貼っておきます。
何かつながりか、ご縁があったりするのかなあ。
いつかわかればいいな、と思います。

http://venex1.exblog.jp/i32
from: emix | 2013/04/06 12:01 AM
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COMMENTS
  • シカring
    R.Hashimoto (04/30)
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    emix (11/19)
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    夢子 (08/18)
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